2016年4月30日土曜日

【読書レポート 2016-002】

□書名:『スタンフォード大学 夢をかなえる集中講義』
□著者:ティナ・シーリグ(Tina Seelig スタンフォード大学工学部教授)
□出版社:CCCメディアハウス
□発行:2016.2




 数年前、NHK ETVで放送された「スタンフォード白熱教室」でユニークな創造性開発の方法を紹介し注目された、ティナ・シーリグの最新刊。

 思いついたひらめきやアイデアを形にするための基本プロセスとして、「インベンション・サイクル」を提案している。
これには下記のような4つの要素がある。

 


Imagination(想像力)・・・・存在していないものをイメージする力
Creativity(クリエイティビティ)・・・・想像力を駆使して課題を解決する力
Innovation(イノベーション)・・・・クリエイティビティを発揮して、独創的な解決策を編み出すこと
Entrepreneurship(起業家精神)・・・・イノベーションを活用してユニークなアイデアを形にし、他の人たちの想像力をかきたてること

 このプロセスを実践すれば、ユニークなアイデアを思いつき、それを形として実行できるようになる。


1.Imagination(想像力)
インベンション・サイクルの第一段階。
想像力を豊かにするためには、以下の2つがある。

●どっぷり浸かる(Engage)
 1つのことに、どっぷり浸かる。じっくり観察することで、少し見ただけではわからないチャンスに気づく。ひとつの世界に飛び込み、そこにどっぷりと浸かることによって、パターンに気づき、チャンスに気づき始める。

●ビジョンを描く(Envision)
 大胆な未来を思い描く。自分がどのようなビジョンを思い描けるかで、成し遂げられる成果が決まる。グーグルが自分たちのビジネスを単なるオンライン検索だけに限定していたら、自動運転車を開発することは考えなかっただろう。アマゾンが書籍販売しか考えていなかったら、クラウドビジネスなどのインターネット・サービスを立ち上げることはなかったであろう。

2.Creativity(クリエイティビティ)
クリエイティビティを養うには、以下の2つがある。

●やる気を高める(Motivate)
 クリエィティブに問題を解決できるかは、絶対に問題を解決するんだという意欲にかかっている。エネルギーを満タンにし、前にどんどん進み、障害にぶつかった時にそれを跳ね返す力を与えてくれるのは、自分のやる気しかない。

●実験を繰り返す(Experiment)
 実験を繰り返し、アイデアの方向性が正しいか否かを確認する。その際、重要な考えは「プレトタイピング」である。これは、「投資する前にテストして」、製品をつくるかどうかを判断しようというもの。よく知られている「プロトタイピング」とは異なり、プロトタイプをつくる前の段階で、正しい方向に進んでいるかを確認するための実験といえる。
 新しいアイデアというのは、失敗する場合が圧倒的に多く、できるだけ早く試して、方向性が正しいかどうかを確かめた方がよい。

3.Innovation(イノベーション)
イノベーションを起こすには、以下の2つがある。

●フォーカスする(Focus)
 実験でアイデアを試すだけの意欲はあったとしても、的を見据えて集中しなければ、長期的な目標はいつになっても達成しない。集中するコツは、時間も心も、自分にとって意義のあるものに割くことが大事だ。
 今、この瞬間の自分の感覚や思考、感情に集中し、注意を向けることを「マインドフルネス」と呼ばれる。

●フレームを変える(Reframe)
 ものの見方や視野・視点を変化させる。過去の経験、現在の状況、心の状態を捉え直し、ユニークな解決策を生み出す。常識を疑うことが大事である。

4.Entrepreneurship(起業家精神)
起業家精神を養うには、以下の2つがある。

●粘り強く続ける(Persist)
  ぶれることなく、粘り強く続けることが必要である。前例のない大胆なアイデアは徹底的に叩かれ、死の寸前まで追いつめられる。それに屈することなくやり続けるイノベータだけが成功できる。

●周りを巻き込む(Inspire)
  自分のプロジェクトに周囲を巻き込む。そのためにも、何をしようとしているのか、それはなぜなのかをビジョンをはっきりと周囲に伝える必要がある。


               <ティナ・シーリグ自身によるインベンション・サイクルの説明動画>





《コメント》
ティナ自身も本の中で語っているが、インベンション・サイクルは「デザイン思考」の枠組みを下敷きにしている。
今後、このBlogの中で、「デザイン思考」についても掲載したいと思います。

(の)




2016年4月24日日曜日

【知見共有「自己効力感」】
□分類:リーダーシップ

■自己効力感

・「自己効力感」とは、ある具体的な状況において最適な行動を成し遂げられるという予期、確信、自信。
「僕はやれる、できる」という確信、自信。
・社会的学習理論で知られるカナダ人心理学者アルバート・バンデューラ(Albert Bandura )により提唱。
・自己効力感の源泉としては以下の3つがある。

 a.成功体験:最も重要な要因で、自分自身が何かを達成したり、成功したりした経験
 b.代理経験:自分以外の他人が何かを達成したり成功したりすることを観察すること
 c.言語的説得:自分に能力があることを言語的に説明されること、言語的な励まし


2016年4月19日火曜日

【読書レポート 2016-001】

□書名:『ビックバン・イノベーション~一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ~』
□著者:ラリー・ダウンズ/ポール・F・ヌーネス 共著
□出版社:ダイヤモンド社
□発行:2016.2





 爆発的な成長により、わずかな日数で既存ビジネスを破壊する「ビックバン・イノベーション」。その破壊的メカニズムを解明している。

1.ビックバン・イノベーションの定義

 ビックバン・イノベーションとは、「安定した事業を、ほんの数か月か、時にはほんの数日で破壊する新たなタイプのイノベーション」のことである。
 これをもたらした背景の1つは、IT革命だ。
 1965年、インテルのファウンダーの一人、ゴードン・ムーアは、「ムーアの法則」を発表する。
 
 半導体性能は1.5年で倍増し、その価格は半減する。

 このムーアの法則は2020年までは確実に成立し、それ以降のポスト・ムーアの時代に突入するという《日経エレクトロニクス 2015.4月号 特集「さらばムーアの法則」》。

 この指数的に進化する技術こそが、破壊的製品やサービスを世に出すプラットフォームだ。

2.ビックバン・イノベーションによる破壊的製品やサービスの特徴

 ビックバン・イノベーションによる破壊的製品やサービスの特徴は、以下の3つである。

①枠にとらわれない戦略
 ポーターの競争優位戦略論に従えば、企業は3つの基本戦略のうちのいづれか1つに集中すべきだとされてきた。

「競合よりもよいか、安いか、あるいは狭い市場セグメントに特化した製品・サービスを提供する」。

 ところが、破壊的製品やサービスは市場に登場した時点で、既存企業の製品やサービスよりも「よりよく、より安く、よりカスタマイズされている」。つまり、従来の「枠に全くとらわれていない」。

②とめどのない成長
 破壊的製品やサービスは、登場するや否や、急成長し、市場を独り占めする。

③自由奔放な開発
 ビックバン・イノベーションを実現する企業は、既存部コントソフトウエアとを組み合わせた低コストの実験を矢継ぎ早に試みる。製品テストは市場で直接行われ、ユーザーがパートナーや資金提供者となって、製品作りに参加する。

3.ビックバン・イノベーションによる3つのコスト低減

 ビックバン・イノベーションは、以下の3つの「コスト低減」によって、産業組織や競争、戦略を本質的に変える。

①製造コストの低減
指数関数的技術がコストを低減させることで、高品質の製品を低価格で提供できる。

②情報コストの低減
インターネットで多くの情報を得られるようになった消費者が、「とめどない成長」を促す。

③実験コストの低減
ビックバン・イノベーションを実現する企業は、製品を一から設計しない。すでにある部品を再利するという、安価でリスクの少ない方法を選び、製品やサービスにわずかな特徴をつけ加えることで差別化を図る。

4.ビックバン・イノベーションの注意点

 既存技術の絶妙な組み合わせとビジネスモデルとがうまく合わさった時、一気に顧客が殺到する。爆発的に売れた場合、すぐに市場は飽和状態に達する。よって、ビックバン・イノベーションを
起こした企業は、次の「準備」を怠ってはならない。急激な売上の後には、急激な落ち込みがやってくる。
 すかさず、次のことを準備しておく必要がある。
 ●次の破壊的製品やサービスを投入する準備
 ●その市場を後にして、手元の資産を別の産業に投じる準備 をしておかなければならない。

  (の)