2016年10月20日木曜日

【知見共有「人事評価の新潮流GE9ブロックを止めたのは本当だった!Part」】
□分類:人事マネジメント

   2016.10.16(日)に、僕は東京・渋谷・代官山で会社が法人会員になっている「人材育成学会」の研究会に参加した。
   研究会のテーマは『パフォーマンス評価の新潮流』。
   その研究会での講演で、僕は、GE社などの人事部マネジャーから、「パフォーマンス評価の新しい取り組み」を直接聴くことができた。

   日本の企業の人事部が手本にしてきた米GEの人事制度である「セッションC」。
   後継者の育成・配置のための人材評価の仕組みで、「9(ナイン)ブロック」が評価ツールとして活用されている。「業績結果×GEバリュー発揮」の2軸のレベルをそれぞれ3段階に分けた9ブロックの中で社員を順位付けする。
  僕は起業前の前職(リクルート)時代(2000年代初頭)に、某大手グローバル電機メーカーの評価者トレーニングの設計に関与したことがある。この企業も「業績×バリュー発揮」の評価制度に転換した。
 当時僕はGE社の評価システムを研究し、それを当時のJ・ウェルチCEOの掲げる「ビジョンと戦略」を実現する、アライメントがとれた優れた評価システムと認識していた。また、バリュー発揮の切り口(ディメンジョン)や項目は、僕がコンピテンシー作成をする際のベンチマークにもなっていた。


 そのGE9ブロックを2016年から止める。
 「人材育成学会」の研究会での、GEの人事部マネジャーからの話は僕にとって衝撃だった。

①評価変革の背景

「インダストリアルインターネット」。

GE社が掲げる成長のための新構想だ。航空機エンジンや発電所のタービン、鉄道車両などをネットワークに繋げ、そこから、生み出されるビックデータを解析し、オペレーションの効率化につなげる取組みである。
GE社はIoTビジネスを中心に据えて、既存事業の変革を図ろうとしている。

昨今のビジネス環境はVUCAと呼ばれることがある。
Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧模糊)の4つの頭文字からできている。加速度的な変化がVUCAを常態化する環境に如何に対応できるか?
強い組織、強い人材が求められることは必然である。

GE社もシリコンバレーにラボを作り、エンジニアを大量採用し、シリコンバレーの文化を積極的に導入している。
GECEOジェフリー・イメルトはこう語る。
「…産業の変化に対応するには最適な実行者が不可欠。同時に、よく素早く、よりインタラクティブな文化を身につける必要がある….」(日経ビジネス 2016.10.17号 P13)。

GE社はこれまで導入していた「シックス・シグマ」「ワークアウト」「CAP(チェンジ・アクセラレーション・プロセス)」という変革手法に加えて、「ファストワーク」という新たな製品開発プロセス手法を2012年頃から開始した。
「ファストワークス」とは文字通り、「素早く働く」ことを意味する。システム開発でのキーワードである「アジャイル(俊敏さ)」と同義である。
重厚長大企業の代表格であるGEに最も欠けていた「アジャイル」を求める革新的な取り組みといえる。
このファストワークスは大きく3つの要素で成り立っている。
「構築(Build)」「計測(Measure)」「学習(Learn)」だ。この3つのサイクルを素早く、しかも何度も回して、製品の完成度を急速に高める。

「準備に時間をかけるのではなく、まずは作ってみる。顧客からは定期的にフィードバックをいただき、必要あれば思い切って方向転換する」。

まさに、デザイン思考的に「プロトタイプ」を作り、顧客とのコミュケーションの中で新たなインサイトを発見していき、プロダクト(またはサービス)を改善を図っていくプロセスを推し進めている。

 このようなアジャイルに対応する文化形成にとって、年2回の「9(ナイン)ブロック」評価がそぐわなくなってきた。期初に上司が部下と設定した目標も環境の変化により意味がなくなる。
 GE社はカルチャー・チェンジに向けて、米ITスタートアップ企業やシリコンバレー系企業を調査・研究する。
 折しも、2015年にGoogle社人事担当上級副社長ラズロ・ボックが自社の採用・育成・評価について書いた『Work Rules』がベストセラーになったのも偶然ではないだろう。

 GE社は、2016年度より、下記のように人事評価を改める。
1No Rating(レイティングの廃止)
レイティングを付け、それを説明するためのプロセスを廃止
2No Curve(正規分布の廃止)
評価の調整の際に、あらかじめ定めた正規分布率(ベルカーブ)に収めるのを廃止

次回のBlogでは、この新しい評価の運用のポイントを(講演から得た情報の範囲内で)記載したい。

PartⅡに続く)



※このBlogの内容は、2017.10.16に行われた「人材育成学会」での講演内容をベースに、他メディア(Web、記事、雑誌、書籍、論文など)の情報を盛り込み、著者によって記されたものである。
 よって、本Blogの内容はGE社および「人材育成学会」としての正式な発表内容ではないことを言及しておきます。